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世間では
12月3日日曜日。
世間ではクリスマス1色だ。
俺、千夜保(せんや たもつ)は、極道の1人息子でありながら、パティシエになりたいという将来の夢を持つ、高校3年生だ。
今も千夜組の屋敷の厨房で親父…組長を納得させる為のケーキ作りに集中していた。
俺が卒業までに親父を納得させるケーキを作れたら、パティシエの道を目指す許可が貰える。
作れなかったら千夜組の跡を継ぐ事になっている。
そして、俺は未だに許可を得ていない。
クリスマスケーキも今年は俺が作ることになっている。
これを機に親父を納得させたい。
スポンジに生クリームをナッペし終わったところで、俺はひと息ついた。
「フー」
冬だってーのに、俺は額に汗をかいている。
ケーキスパチュラ片手に俺は手の甲で汗を拭った。
「坊ちゃん、凄い集中力ですなあ」
気付くと組員の田中源太(たなか げんた)が、いつの間に厨房に入って来ていたのか、俺の直ぐ近くにいた。
田中は俺が産まれた時から居る親父の右腕だ。
俺が跡を継がないと、自分が親父の跡を継がなきゃいけねー事を承知で俺に協力してくれている。
「居たのか、田中。いつからいたんだ?」
「坊ちゃんが生クリームを塗り始めた頃からです。邪魔してはいけないと思いやして」
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