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てえか、女ってピンク色が好きな奴、多いよな。
香澄は慣れない手付きでメットを被るとキョロキョロし始めた。
「どうだ?香澄」
「意外と周りの景色がハッキリ見えるのね。…うん、良い感じよ。これが欲しいわ。でも…」
メットを被ったまま、香澄は俺を見上げて遠慮がちに言う。
「これ幾ら位するの?」
香澄は、どうやら俺の持ち金を心配しているらしい。
俺は香澄を安心させようとウインクをして言った。
「メットにも、ピンからキリまであるがな。それは大体2,000円位だ」
俺の言葉を聞いて、香澄がメットを外す。
「だったら、これにするわ。千夜くん、有り難う」
そう言って差し出されたメットを香澄の手に触れる様に受け取る俺。
メットを片手で持ち会計に向かうと、丁度中野さんが他の客の対応を終えたところだった。
「中野さん、これプレゼント用に包んでくれ」
「かしこまりました。…って言ってあげたいところだけど、ウチの店ではそういうサービスはしていないんだ」
中野さんは申し訳無さそうに俺に言う。
確かに他のバイク屋は知らねーが、この店でプレゼントを買う客を俺は見たことがない。
「千夜くん、何なら他のものでも良いわよ?」
さて、どうしたモンかと考えていると、後ろから香澄が不安そうに俺に告げた。
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