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流石、田中。
よくわかってやがる。
今は日中の午後だから、厨房には俺と田中しかいねー。
「それで田中、何か用があったんじゃねーのか?」
「はい、先程、香澄お嬢さんと鈴木の坊ちゃんが新しいご友人を連れて来ました」
香澄とは恋人の諸橋香澄(もろはし かすみ)、鈴木は親友の鈴木航(すずき わたる)のことだ。
俺は2人とも受験勉強にご執心だと思っていたから驚いた。
それに田中の言う、新しいダチって、まさか…。
「今は坊ちゃんの部屋で皆さん勉強しているみたいですぜ」
「わーった。丁度良い。ケーキが完成したら、部屋まで持って行くって伝えてくれ」
「かしこまりやした」
そう言うと田中は厨房を出て行った。
親父に食わせるにもワンホールじゃ量が多いからな。
かと言って、30人くらいいる組員達に配るのは逆に量が少ない。
俺は再びケーキ作りの続きに取り掛かった。
完成したケーキを切り終えて、先ずは親父の部屋にひと切れ持って行った俺は、次に4切れのケーキをトレーに乗せた。
親父の奴、毎回、感想言わねーからな。
厨房に戻ってきた時、食べ残していたら、明日、又、やり直し。
完食していたら、俺は晴れてパティシエの卵になれる。
完食を願って、俺はトレーを持って自室に向かった。
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