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古屋敷にて
「だ、大丈夫…少し痛いけど…」
呆然と香澄は鈴木に応えるが、その視線は明らかにブラウスのシミに向いている。
俺は絞め上げたままの山村をいきなり離すとコートを着た。
「ゴホ!ゴホ!」
ソファー席に倒れ込んだ山村を鈴木が心配そうに言う。
「大丈夫ですか?!山村先輩!」
この際、大丈夫じゃなくても知ったこっちゃねー。
俺は香澄の分まで荷物を片手で持つと、もう片方の手で、シミが隠れる様にコートを羽織らせた。
「千夜くん…?」
「古屋敷まで急いで帰るぞ、香澄。着いたら先ずは手当てと洗濯だ」
俺はそう言うと、まだ苦しそうに咳込んでいる山村と鈴木を置いて、とっとと喫茶店を出ようとコーヒー代2人分をテーブルの上に置く。
「済みません!諸橋さん!」
「コッチこそごめんね。後で連絡するから」
ったく、謝らなきゃいけねーのは山村の方だ。
俺は香澄が立ち上がってコートのチャックを閉めるのを見ると腕を引き、帰路に着いた。
古屋敷に着いた頃には辺りはもうすっかり暗くなっていた。
俺はシェアするラッピング用紙等、荷物を居間に置くと香澄の元へ行った。
香澄が洗濯機の前でブラウスを脱ぐ。
上半身が色っぽい下着姿になるが、今はそれどころじゃねー。
幸い火傷の方は、微かに紅くなっているだけで、そんなに香澄は痛がってねー。
だが、氷嚢をしばらく当てておいた方が良いだろう。
「香澄、火傷したところにしばらく氷嚢を当てておけ」
「解ったわ。今、持って来る。でもブラウスのシミはどうするの?」
「それだが、漂白剤の塩素系でないとシミは落ちねーからな?洗濯機にかけるのは仕上げで先ずは、こうして…」
香澄が氷嚢を持って来て、火傷したところに当てながら、俺の手元を見てる。
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