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「えっ!で、でも、謝ろうとしているんじゃない?山村先輩は私の連絡先、知らないし…」
そうこうしている間に電話は切れた。
香澄より俺の方がよっぽど大人げ無いな…。
つまみ洗いをしながら、徐々にシミが薄くなっていくのを見て俺はふと思った。
と、又、携帯が着信音を鳴らす。
「山村先輩だわ。私が出るわね」
香澄は俺の応えを待つ間も無く、電話に出る。
スピーカーにしたのか、山村の声が俺にも聞こえてくる。
『もしもし…香澄ちゃん、さっきはごめん…』
「ううん、大丈夫よ?今、千夜くんにシミ取ってもらっているから。火傷も大したことないし」
『保、僕のこと嫌いになっちゃった!』
涙声の山村に呆れて俺は口を挟んだ。
「あのなあ、山村。俺も、やり過ぎたのは悪かった。だが、これに懲りたら俺の真似をするのはよせ」
『保ー…』
「俺の真似して、あんたの良いところまで潰しちまうことはねー」
『じゃ、じゃあ、許してくれるの?!』
「当の香澄が怒ってないからな。だが、次は無いと思え」
『う、うん。気を付けるよう。ありがと、保に香澄ちゃん』
「イヴの日に会えるの楽しみにしているわ」
『僕も!じゃあねー!』
今、泣いた山村がもう笑って、電話を切る。
俺は正直、複雑な心境だったが、これで山村とは仲直りしたと言って良いだろう。
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