古屋敷にて

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シミが目立たなくなったブラウスをよく濯ぐ。 塩素系の漂白剤と洗濯洗剤の『酸素系』が混ざったら有毒ガスが発生し、危険だからだ。 そして、ネットに入れて、洗濯機に掛けている間に、俺と、氷嚢を冷凍庫に入れ部屋着に着替えた香澄は、暖かい居間で、ラッピング用紙のシェアをすることにした。 「これ位で良いか?」 「もう少し短くても良いわよ?」 「だが、まだまだこんなに在るんだ。せっかくだから、これ位やるよ」 俺は物差しをラッピング用紙の上に置き、真っ直ぐになる様に香澄に押さえていてもらいながら、慎重に切っていった。 鈴木の分と山村の分。 「ありがとう、千夜くん」 香澄は素直に受け取った。 そして、喫茶店では飲めなかったコーヒーを2人きりで飲む。 そう…他には誰も居ない古屋敷の一室で。 俺と香澄は自然と無口になった。 そして、カップに添えられた香澄の手に俺の手をそっと添える。 「香澄…」 「千夜くん…」 香澄は暫く俺を見つめていたが、やがて目を閉じた。 俺は身を乗り出し、その唇にキスをしようとした。 その時、又しても俺の携帯が鳴り、香澄は目を開ける。 俺も動きが止まった。 見ると表示は『田中』になっている。 いつのまにか時間は夕食時を過ぎていた。 何だよ、良いところだったってーのに。
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