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「「「はい」」!」
これだけ組員さん達がいると迫力があります。
田中さんを先頭に僕達はヤクザで出来た道を歩きました。
組長さんが千夜くんに跡を継いで欲しい気持ちが少しだけわかった様な気がしました。
千夜くんも以前、自分が跡を継がなければ、田中さんが跡を継ぐしかなくなると言っていました。
組長さんにしても、彼らの人生を背負った責任があるのでしょう。
そう考えると、自分が納得できるケーキを作れたらパティシエになって良い。って千夜くんからの条件を呑んだ組長さん。
意外と太っ腹なのかもしれません。
「田中さん、今日、組長さんはいらっしゃいますか?」
僕は気になった事を聞いてみました。
「はい、自室で坊ちゃんのケーキをお召し上がり中です」
「そうなんですか?」
少し意外な気もしましたが、やはり組長さんも頭ごなしには千夜くんの夢を反対している訳じゃない事が解って、僕は少しだけ安心しました。
ケーキを切り分けていると、不意に人の気配がした。
「坊ちゃん、お客人たちを連れて来ました」
「「「今晩わ」」!」
「応、よく来たな…って言いたいところだが、ちょっと待ってろ。最後の一切れを今、切っているからよ」
ケーキから目を離せない俺は、香澄達の相手を田中に任せて、少しずつケーキスパチュラを動かしていく。
はたから見たら異色の光景だろうな。
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