クリスマスイヴ

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「そうか」 鈴木と香澄の感想を聞いて俺も自作のケーキを一口食べる。 「やっぱ、この出来じゃあ、親父は納得しないだろうな」 「でも坊ちゃん、先日頂いたのは、初めから比べると格段に上達してましたぜ」 田中がリビングに戻って来て、テーブルの上にシャンメリーとグラスを置いた。 田中はフォローしてるが、俺がワザと甘さ控えめに作ったと知ったら、どう思うだろうな…。 香澄は、それでも尚も俺を励ます。 「千夜くん、ケーキもお料理も一生懸命作ったのは、どれも立派な作品よ。それにまだ高校生だもの。伸びしろに期待出来るわ」 「サンキューな、田中に香澄。鈴木の意見も参考にさせてもらうぜ」 「千夜くん…」「恐れ入ります」「坊ちゃん…」 「保ー、僕にはー?」 「あんたは美味いしか言ってねーだろ」 「だってホントに美味しいんだもん!」 「千夜くん!山村先輩の気持ちも察してあげて下さい!」 「わーったよ!…田中、シャンメリー注いでくれ。俺達ケーキ食ってるからよ」 俺は素っ気無くそう言う。 「かしこまりました」 田中は田中で、俺に言われた通り、シャンメリーのコルクを抜いた。 シュワーという炭酸の音が、ケーキを食べてる俺等にも聞こえる。 田中は、そのまま泡が溢れないように器用にグラスに注いでいった。 田中がリビングを出て行った後、山村が1番にケーキを食べ終わった。 次に食べ終わった香澄が、思った通りカットされたケーキに手を伸ばす。 「香澄、太るぞ」 俺は香澄にそう言ってニヤリと笑った。
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