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「若頭が居たぞ!」
ジリジリと廊下に出たところで、直ぐ近くから聞いた声に、俺は舌打ちすると、鉄パイプを突き出した。
「グフッ!」
見事に命中したが、その後ろに居た組員には間合いに入られた。
しまった!
そう思い、足払いを掛けるのと、組員が俺の右足に切りつけるのは、ほぼ同時だった。
「ってー…」
「ぐわっ?!」
右大腿部に痛みが走ったが、切りつけた組員は転んだ拍子に頭を打って動かなくなった。
気絶しただけかもしれないから、俺はリビングに戻ることは諦め、勝手口から外に出て脱出することにした。
香澄等なら田中に守られている筈だから大丈夫だと自分に言い聞かせながら。
「待てー!若頭!」
玉名組員の声が自室の方から聞こえてくるが今は待つ訳にはいかない。
俺は組員がチャカを持っていないのを目視するとワザと廊下の角を曲がりまくって追っ手を撒こうとした。
ところが、あちこちで千夜組員と玉名組員の争いが勃発してる。
「若頭!ここは我々に任せてお逃げ下さい!」
「解った!死ぬなよ!」
俺は怪我した箇所から流れ出る血に最短ルートで勝手口に急ぐことにした。
と。
「キャー!千夜くん、助けて!」
勝手口付近まで来た時、何故か香澄らしき悲鳴を聞いた様な気がした。
急いで来てみると、本当に香澄が蹲ってる。
俺は香澄に攻撃しようとしてた玉名組員の後頭部を鉄パイプで思い切り殴った。
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