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俺は香澄を見つけるまで玉名組員との喧嘩…いや、戦いで血が流れ、全身をジンジンとした激痛が走っていた。
手も俺の血なのか、倒した奴の血なのか、解らない位、真っ赤だ。
香澄は俺の手を握った。
その手は小刻みに震えている。
俺は痛みを堪えて、グイッと香澄の身体を起こした。
「リビングで田中達と居たんじゃねーのかよ!」
「それがトイレに行ってて…」
「だったら、そのままトイレに隠れてろ!」
「だって、千夜くんが、くれたプレゼントをリビングに置いて来ちゃったから…」
「俺からのプレゼントと自分の命と、どっちが大切だよ?!メットなんざ又、買いに行きゃー良いだけじゃねーか!」
「ごめんなさい…」
香澄は震える声で俺に謝った。
と、その時、俺と香澄の間を「バキューン!」という銃声と共に、銃弾が横切った。
俺は舌打ちをすると、香澄の手を引いて勝手口から外に出た。
直ぐ近くにいた、おそらく玉名組のヤクザであろう男を俺は鉃パイプ片手に殴り飛ばす。
玉名組員は倒れたが、俺の全身の傷からも血が止まる事なく流れていた。
気が遠くなりそうになるが、香澄もいる以上、ここでくたばる訳にはいかねー。
俺は頭を振り、どうにか意識を保つと香澄に言った。
「こっちからいずれ討ち入りするつもりが、玉名組に先手を取られるとはな。…香澄。奴等の狙いは、親父と俺だ」
「つまり、千夜組を壊滅させようとしてるって事…?」
香澄は今にも泣きそうな顔をしている。
「おそらく、そうだろうよ。だが、そんな顔するな!屋敷の敷地外まで全力で守るからよ。香澄、手は離すが、俺から離れるなよ!」
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