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私は構わず、千夜くんの手を握ったまま微動だにしなかった。
このまま彼の傍を離れたくない。
大分、ヤクザの数が減ったのか、先ほどまでの喧騒は大分、小さくなった。
田中さんは、私の近くまで来ると言う。
「組員の1人から聞きました。坊ちゃんが撃たれて、一緒に居た女性も撃とうとしたから、拳銃で倒した、と」
おそらく、さっきの組員さんが田中さんに知らせてくれたのだろう。
私は田中さんに。
「お嬢さん、プレゼントは壊されましたが、山村の坊ちゃんと鈴木の坊ちゃんは無事です。逃げましょう。まだ油断は禁物です」
と言われたのを無視した。
「お嬢さん?」
「千夜くん…」
「お嬢さん!坊ちゃん達の為に救急車を呼んであります。だから、今は逃げましょう!」
田中さんは強引に私の腕を引っ張る。
「嫌よ!千夜くんを置いて逃げるなんて!」
「お嬢さん!」
田中さんは私を羽交い締めにして、無理矢理、千夜くんから引き離した。
ずるずると田中さんに引きずられて、千夜くんが遠くなる。
「嫌ああああああああああああああああ!」
私の絶叫は虚しく、聖夜の夜空に吸い込まれていった。
千夜組は組長さんが無事だった為、壊滅は免れた。
あの後、手薄になった玉名組に、千夜組の中で怪我が酷くない組員さん達が討ち入り返しをしたそうだ。
そして玉名組の組長さんを始め、生き残っていた組員さん達を全て倒して玉名組を壊滅させたという話だった。
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