抗争

8/8
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
千夜くんは集中治療室で手術を受けているらしい。 当然、面会謝絶だろう。 私は千夜組の車に、鈴木くんと山村先輩と共に、許可を得て乗らせてもらって、病院に着いた。 集中治療室の前まで行くと、田中さんが、先に椅子に座っていた。 「お嬢さん、坊ちゃんの胸ポケットに、これが」 田中さんが私に渡してくれたのは、銃弾が刺さったロケットペンダントだった。 中を試しに開けてみると、写真が見えた。 「これ…私…?」 銃弾が邪魔して直ぐには解らなかったが、アルバムから切り取ったのだろう。 私の写真だ。 「今夜が山場だと医者が。下手すると、植物人間になる可能性もあると…」 私達3人は息を呑んだ。 「ここだけの話、貴方達の話をする時の坊ちゃんは、いつも生き生きしてました…」 田中さんの言葉に、私はロケットペンダントを握り締めたまま、その場に崩れ落ちた。 「う…っ、うっ…!うわあああああああ!」 深夜の病院内であることも忘れて、私は号泣した。 鈴木くんもメガネが涙で曇っていた。 山村先輩も涙と鼻水で可愛い顔が台無しになっていた。 田中さんが、悔しそうに、椅子を殴った。 もう夜も遅いからという田中さんの計らいで、私達3人は千夜組員さんの車に再び乗せてもらい、それぞれの家まで送ってもらった。 車に乗っている間、私達の間に会話はなかった。 田中さんによると、誰かがパトカーを呼んだらしいから、しばらくは屋敷に近付かない様に忠告された。 古屋敷に着いて、布団に横になっても、脳が興奮して眠れなかった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!