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年が明けて
冬休みに入った。
山場を越えた千夜くんだったが、依然、意識は戻らず、予断を許さない状態だった。
私と鈴木くん、山村先輩は毎日、病院に行っては、面会謝絶で、千夜くんの居る集中治療室の中に入るのを断られる始末だった。
私は受験勉強に身が入らなくなった。
参考書を読んでいても、文字が頭に入っていかない。
第一次センター試験日まで1ヶ月を切っていた。
夜。
私達3人はグループ通話をしていた。
私は2人に受験勉強に身が入らないことを吐露した。
『香澄ちゃんの気持ち、僕もよくわかるよう。僕も料理していて包丁で指切っちゃった…』
「大丈夫?山村先輩」
『うん。直ぐに消毒して、絆創膏を貼ったから大丈夫だよう』
『お2人共、お気持ちはわかりますが、千夜くんが意識が戻った時、ガッカリしない様に、受験勉強も料理も頑張りましょう』
そう言う鈴木くんの声も疲れきった様な声だった。
お願い、千夜くん。
私達をおいて逝かないでね。
鈴木くんと山村先輩が居てくれて良かった。
そうでなければ、私は心が折れていたかもしれない。
元旦。
私達は千夜くんが意識が戻った時に気付く様に、千夜くんの好きなタマナグミのレモン味を手土産に病院に向かった。
グミなら常温でも保存出来るし、病室には入れなくても、病院の方で預かってくれるかもしれない。
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