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と、そこには…。
「千夜くん…嘘、でしょ…」
私の手から持っていたタマナグミが落ちる。
千夜くんの顔には白い布が被されていた…。
私は千夜くんの元へ駆け寄ると、ここが病室だともいう事を忘れて、叫んだ。
「千夜くん!千夜くん!!そんなのってないよ!私…っ!私…っ!う…っ!う…っ!ひっく…!」
私はベッドの直ぐ脇で、崩れ落ちると、声を押し殺して泣いた。
涙がぽろぽろと、千夜くんの横たわったベッドのシーツに吸い込まれるのも構わずに。
と、その時、鈴木くんが冷静に言う。
「おかしいですね。心電図が規則正しく鳴っているのに、臨終するとは思えないのですが」
「鈴木、余計なこと言うなよ」
「…?」
始めは何だろう?と思った。
千夜くんの方から声が聞こえたような…。
私は涙を手でこすると、顔を上げた。
呆然とする私を他所に、千夜くんの腕が自分の顔の方に伸びて、手で被されていた白い布を取る。
「せっかく香澄等を驚かせようと思ったのによ。作戦は失敗だな」
「せ、千夜くん…?」
千夜くんは、間違いなく意識が戻っていた。
鈴木くんの言葉に、よくよく心電図を見ると確かにピ、ピ、と規則正しく動いている。
「…酷い!騙したのね?!本当に死んじゃったのかと思ったじゃない!!」
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