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第18話 「クラリスの悪夢」
ガヴァナー家の別荘は、ウィンフィールド湖のほとりにあり、冬を迎えたウィンフィールドの山々は白く色づき、湖畔は白銀の粉を一面に散らしたような、寒々とした景色で、その美しい光景は、まるで、巨匠の絵画を眺めているかのような気分にさせた。
別荘は4階建ての豪邸で、約700エーカーの土地に建つヴィクトリアン様式の建物だ。屋敷からは湖が一望でき、エントランスポーチから5分ほど、芝生の上を歩けば湖に辿り着く。
700エーカーともなると、端から端まで歩くのも一苦労で、当然のように馬車で移動しなければ、足が棒になるどころか、蛸のようにウネウネと動く未知の生物になりかねない。
この広大な土地には、テニスコートやゴルフコースが併設され、毎年夏になると、客人を招いてコンペディションを開催する。
クラリスは初めての旅行に緊張したが、尻込みすることはなく、期待に胸を躍らせた。それは、チェイスが別邸の使用人全員を連れて行くことにしたからかもしれない。
少しでも慣れた環境で、別荘を楽しんで欲しかったチェイスは、別荘を利用するときだけ雇う、臨時の使用人を配置しないことにした。
こちらにはダグラスがいるから、ブランドンは本邸で、侍女長である妻と夫婦水入らず、ゆっくり過ごしてくれと言い、チェイスはブランドンに留守番をさせた。
朝の9時に、ベレスフォードから汽車に乗り——多人数での移動ということもあって、クラリスが落ち着けるようにと、汽車は丸ごと貸し切りにした——ウィンフィールドまで、マンデル侯爵領を経由し、約4時間かけてガヴァナー家の別荘まで辿り着いた。
馬車のドアを開けた瞬間、寒さを物ともせず、雪の中へ駆け出したセオドアを横目に、チェイスはぶるりと体を震わせた。
チェイスは馬車から降りるクラリスに手を貸した。「雪景色はとても綺麗なんだけど、寒いのが難点だな」
チェイスはレイチェルからミンクのショールを受け取り、ミンクのコートを着て、ミンクのマフラーを巻いているクラリスに、更にミンクのショールを被せかけて、モコモコにした。
クラリスがカヴァナー家に来て、2年と半年が経つ。最初の頃より、少しだけ体に肉がついてきたが、それでも、一般女性よりずっと細身のクラリスは、寒さに弱かった。
体力もないせいか、風邪を引くとすぐに拗らせてしまうようだった。
湖を見つめ、瞳を輝かせているクラリスにチェイスが言った。「湖を案内したいところだけど、体が冷えてしまっては大変だ。すぐに屋敷に入ってしまおう。屋敷の管理人が、早くから暖炉に火を入れてくれているだろうから、部屋は暖かいと思うぞ」
クラリスはチェイスに手を引かれ、湖が見える2階の部屋へ案内された。暖かい室内にクラリスは、ほっと息を吐いた。
「湖を散策できますか?」
「明日、気温が下がらなければ、少し散策してみよう。今日は汽車や馬車に揺られて、4時間も座りっぱなしだったから、疲れただろう。ひと眠りするといい」
「はい、そうさせていただきます」
クラリスは風呂に入り、体を温めてから寝巻きに着替え、ベッドに潜り込んだ。疲れていたのか、すぐに眠りについた。
※ これより性的に残虐なシーンへと移ります。苦手な方、18歳以下の方は19話へ飛ばしてお読み下さい。
色の無い世界、これが夢だと分かっていても、クラリスは恐怖に身を縮めた。
黒いガウンを着た男が、フードを目深に被り、クラリスのベッドの足元で、何かを呟いている。
クラリスは、うつ伏せに寝かされ、両手と両足を鎖で繋がれ、ベッドに縛りつけられている。うつ伏せにされるときは、いつも背中を鞭で打たれる。
口に咥えさせられた木の棒を、クラリスは噛み締めた——この広い城の中で、悲鳴が届く範囲など高が知れている。彼らは、クラリスに悲鳴をあげさせないようにしているのではない、クラリスが舌を噛んで自決しないよう、木を噛ませているのだ——男が何をしているのか、目を忙しなく動かし見ようとするが、よく見えない。
クラリスはその時、侍女が1人もいないことに気がついた。いつもなら悪魔祓いの儀式に、侍女が4人立ち会うはずだが、ある日を境に侍女が立ち会わなくなった。
これは12歳の時の最悪な一夜の夢、いつもの夢だと、意識の中のクラリスは気がついた。
男はクラリスの服を、鼻歌交じりにハサミで切り裂いた。全裸にされたクラリスの目から涙がこぼれ落ちた。
男が垂らした香油が冷たくて、クラリスはぶるりと震えた。男はクラリスの尻に香油を塗り込み、指を突き入れた。
あまりの痛さに、クラリスは目から火が出そうだった。
微かな悲鳴をあげたクラリスの頬に、男はキスをした。「アビー、僕のアビー、泣かないで、今から僕と君は愛し合うんだよ。ずっとずっと君とこうしたかった。やっと一つになれるんだ、君も喜んでくれるだろう?」男はクラリスの顔に頬を擦り寄せた。「優しいアビーは、僕のことを好きになってくれるだろう?僕にはアビーだけなんだ。大好きだよアビー」
男はクラリスの尻に2本目の指を入れ、穴を広げた。
「初めはとっても痛いけど、すぐによくなるからね。本当はアビーと赤ちゃんを作りたいけど、そんなことしたら、父上が怒るだろうから仕方がないよね。こっちの穴で我慢するね」
クラリスは、耳に息がかかるほど近くにある顔が、化け物のように思えて、見ないようにとギュッと目を瞑った。
男はクラリスの尻に、硬直した自らの下半身を突き立てた。
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