262人が本棚に入れています
本棚に追加
story06 所業の代償
彼女の忌明けの法要を終えた。
それを待っていたかのように、俺の元に、
アイツから、レセプションの招待状が届いた。
彼女の実家にも届いたようで、
おばさんが憤慨して、俺の家にやってきた。
「どの面下げてこんなものっ」
おばさんの怒りはもっともだ。
俺もはらわたが煮えくり返る思いだった。
だけど彼女の死を、アイツは多分、知らない。
「おばさん、俺、このレセプションに参加してきます。アイツの態度がどうか確かめます。もしも俺の思った通りなら、彼女の遺恨を晴らしてきます」
おばさんにそう伝え、
唯一、アイツの動向を伝えてくれていた友達と、
招待されたレセプションに参加した。
レセプションは、会社の顔合わせを兼ねていたが、
やはりメインは、アイツの婚約発表。
大々的に紹介され、満面の笑みを浮かべるアイツを、
どこか冷めた目で見る自分がいた。
やがて歓談が始まり、アイツが俺の側へとやってくる。
アイツは俺の耳元で、信じられないことを言ってきた。
「お前、あの女の事、好きだっただろ? 俺は婚約者ができたから、お古だけど、彼女はお前にやるよ」
その心無い言葉に血がのぼり、気づいたら俺は、
アイツを思いっきり殴り倒していた。
血相を変えて、婚約者が駆け寄ってくる。
「何をするんですか!」
そんな女に気にも留めず、俺はコイツに告げる。
「彼女は亡くなったよ」
「………えっ」
「お前の裏切りに耐えかねて」
「…っ」
ぐっと息をのんでいるのが分かった。
「彼女を殺したのは、お前だ」
「…そんな」
「お前がどう思おうと、その事実は変わらない」
殴り倒されたまま座り込んでいたアイツは、真っ青になっていた。
俺はお構いなく告げる。
「その女と幸せになれ。…なれるものならな」
そして、彼女がコイツに宛てて書いた、
彼女の言葉が綴られた手紙を掲げる。
「彼女の、お前に宛てた最期の言葉だ」
「なな何て…」
「火、持ってる?」
俺は、何と書いてあるのか気になるコイツを無視し、
隣の友人からライターを借りて、その手紙に火をつけた。
「何するんだ!!」
「お前のような奴に、彼女の最期の言葉なんか教えない」
手紙は炎々と燃え、
そして、ふわりと舞い、全て灰になった。
「精々苦しめ。俺は今後二度と、お前に会わない」
そう一言吐き捨てて、俺は、友人と会場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!