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その後、アイツの所業が瞬く間に広がり、
令嬢との婚約は白紙になったと聞いた。
その後、父親の事業までも傾き、閑古鳥が鳴きだした。
そのためなのか、父親と二人、慌てて彼女の家にやって来た。
彼女の両親は、彼らに玄関の敷居を跨がせず、
外で二人と対峙した。
「この度は、倅がとんでもないことをしでかしまして…」
父親は、しどろもどろに言い訳を言い連ねる。
だが、彼女の両親は、毅然とした態度で拒絶した。
「今さら来られても迷惑です。申し訳ないとおっしゃるならば、娘を返して下さい。私どもが、いつも願っていたのは娘の幸せ。なのに…それはもう叶わない。二度と来ないでいただきたい」
「では、お線香だけでも…」
食い下がる父親に、彼女の両親がさらに突き返す。
「あなた方を、娘に会わせるなどとんでもない。お帰りください。警察呼びますよ?」
「では、せめてこれを…」
父親は懐から袱紗を取り出した。
それは厚みのある、御仏前と書かれたのし袋だった。
彼女の父親は、さらに神経を逆なでする二人を睨みつける。
「あなた方は、どこまでも我々を馬鹿にするのですね」
「そんなことは…」
すると、我慢の限界を迎えた母親が、
だだだっと家の中に消えると、何かを抱えて戻ってきて、
「帰れ!! 二度と来るな!!!!」
大量の塩をぶち撒けた。
たまらず二人は門の外へ逃げ出ると、
彼女の両親は、門を閉め、
二人を一瞥すると、家の中へ入っていった。
俺は、その一部始終を、自分の玄関先で眺めていた。
追い出された二人の視線が俺に向く。
「………ぁ」
二人は俺の視線を避けるように、
そそくさと退散していった。
親友だったアイツは、
背負った業を清算するかのように、
父親の事業の倒産によって、
夜逃げ同然に、この街から姿を消した。
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