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last story I wanna see you
俺が愛した彼女は、俺の親友の事を愛していた。
彼女のために、親友との仲を取り持ち、
俺は潔く彼女の事を諦めた。
だが、親友は父親の勧めで、どこぞの令嬢と婚約してしまう。
親友は、彼女に会うことなく婚約を破棄し、
彼女に会うことなく連絡を絶った。
憔悴する彼女は、寄り添う俺に、縋り、泣き崩れた。
こんな裏切りを受けても、彼女は親友しか見ていなかった。
彼女は、親友に会いたいと願い、
会えぬ現実に耐えかねて、自ら死を選んだ。
遠すぎる心と、近すぎる身体。
俺の愛は、彼女には届かなかった。
俺の愛は、彼女の親友への愛に及ばなかった。
俺は、弱っていく彼女に寄り添い続けたけれど、
そんな彼女を、傍で護ることが出来なかった。
俺は、あの時どうすればよかったのか。
彼女の慟哭が、今も俺の心を深く抉る。
俺は一人、会えぬ想い人を恋しがる。
彼女がいない世界に、言いようのない淋しさがこみ上げた。
俺は毎月、彼女の月命日に、
彼女が眠る墓前に花を手向け、冥福を祈る。
ロウソクを灯し、線香を焚く。
手を合わせ、雫石を一粒。
そして、心から思う。
………会いたい。
「 」
愛しい彼女の、大切な名前を紡ぎ、
彼女の墓前で膝を折った。
今日のこの日も、俺は彼女の傍に縋り続けた。
どれ程そうしていただろう、
ふと、
「 」
彼女の声で、名を呼ばれた気がして振り返る。
だが、誰もいない墓地には、ただ静寂が広がるばかり。
俺の心が恋焦がれる。
あの優しく、美しい笑顔、
もう二度と会えない、可憐な俺の初恋。
「 」
もう一度、大切な彼女の名を紡ぐ。
俺は心から、
心の底から、
希う。
俺は、愛しいあなたに、
切に会いたい。
− 終幕 −
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