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story02 再び変わる関係
親友は、地元で一番大きい土建屋の跡取り息子。
仕事は修行を兼ねて、従業員と一緒に現場を回っていた。
そんなある日、親友は父親に、彼女を婚約者として紹介する前に、
ある事を一方的に告げられる。
「お前に縁談話がある。これは決まったことだから、女がいるなら今すぐ切れ」
父親は、有無を言わさぬ物言いで、親友を言い聞かせた。
父親に頭の上がらない親友は、
そのまま父親の縁談を受け入れてしまった。
そして、あろうことか電話一本で、彼女に婚約破棄を一方的に告げ、
以降、彼女との連絡を、一切絶ってしまったのだった。
俺がその事を、彼女の涙で知ったのは、
さらに暫く経ってからだった。
定期的な飲み会の連絡がなくて、
どちらに電話を掛けても繋がらない。
どうしたのかと思い、とりあえず、
俺は、向かいの彼女の家に行った。
すると、憔悴しきった彼女が出てくる。
「どうしたんだ!何かあったのか?」
この前に会った時は、
親友と二人、幸せいっぱいだったのに…。
なのに、あまりに疲弊した彼女に、思わず声を荒げる。
彼女は、ショックのあまり言葉を零すことができなくなっていた。
とりあえず家に上がり、話を聞く。
「彼氏君から、娘は一方的に婚約破棄されたの。それ以降、連絡が取れなくなったみたい」
おばさんは、彼女の身体を包み、
そっと背中を摩り心を癒そうと努めていた。
「そんな…。前兆なんて何も…」
俺は、親友にその場で電話を掛ける。
だが、俺も着拒されているのか、
電話に出ることはなかった。
俺は、親友の理不尽な所業に、
怒りのあまり、
スマホを握り潰しかけた。
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