story04 傷心旅行

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 夜、眠る段になり、彼女の部屋で眠るまで傍につく。 「お前が眠るまで傍にいる。だから少しでも眠れ」 「…………ねぇ、一緒にいて欲しい。図々しいお願いだけど、傍にいて欲しい。眠れないの」 「…わかった」  シングルベッドに二人で眠る。  互いに背を向けて。  でも、狭いベッドの上、  背中同士が密着した。  彼女の体温が、俺の体温と溶けあっていく。  やがて、背中越しに彼女の心の機微が流れてきた。  彼女は、声を出さず、ただ静かに泣いていた。  彼女の哀泣は、捨てられた悲しみの涙。  彼女の嗚咽は、自分を責める悲鳴。  彼女の慟哭は、アイツへの未練。  愛してる。  そう彼女に告げられたらどれほどいいだろう。  だけど、  俺の愛は、告げることさえ許されない。  俺の心は、彼女には見えていなかった。  遠くに湖畔の波音が静かに響く。  彼女がアイツの未練を、穏やかに断ち切ってほしい。  そう願い、  俺はあえて、街の喧騒から彼女を遠ざけた。  二人きりの部屋で、外が白みだし夜が明ける。  あれからしばらくして、彼女は泣き疲れて落ちた。  背中越しに、彼女の息遣いを感じる。  俺は、彼女が起きるまでじっとしていた。  やがて、カーテンの隙間からの日差しで、 「………ん」  彼女が静かに目を覚ました。  一呼吸おいて俺も起きる。 「おはよ。少し眠ったみたいだね」 「………おはよう。昨日はごめんね。ありがとう」 「謝らなくていい。俺が勝手にしたことだから」  無意識に、俺の手が彼女の頬を滑る。 「顔を洗いに行こう。そして飯だ」 「………うん」  二人で顔を洗いに向かった。
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