既成事実

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何が起こっているのか、友子にはわからなかった。 だってそこにいるのは、夫とはまるで違う容姿の男なのだ。 夫と違って背も低く、夫と違ってお世辞にも整っているとは言えない顔。 どんな視力の悪い人でも、夫とは見間違えるハズもないほど、全くの別人がそこにいたのだから。 「──友子、出産が近いから、少し不安になっているのかもしれないね。 おいで、僕が抱きしめてあげるよ」 「やめて!! た、助けてーっ!!」 自分に手を伸ばす男から逃げようと、友子は重い身体を抱えながら必死に玄関のドアを開けた。 気の違った男が家に上がり込んでいる! すぐに警察を呼ばなくては! そう思って飛び出した途端、友子はドンと誰かにぶつかってしまった。 だけどその相手の顔を見上げて、友子はホッと胸を撫で下ろした。 「ああ、あなた! 家に、知らない男がいるの…!!」
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