87.エピローグ※

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87.エピローグ※

 私は犬を飼っている。  その犬は黒くて大きくて、私と同じシャンプーの匂いがする。飼い主の心の変化に敏感な私の犬は、私が仕事でミスをして凹んでいたら静かに寄り添ってくれて、楽しい時は一緒に笑ってくれる。  しかも、なんとこの犬は料理まで出来る。  私は毎日出てくる舌が蕩けるような御馳走たちのお陰で、少しばかり体重が増えた。優秀な私の犬はそれを聞いて、彼が知り得る限り最高のダイエット方法を教えると言ってくれた。  なんて素晴らしい犬。  でもこれはたぶん、ダイエットではない。 「………っんん!」 「先生、まだダメですよ。勝手に動かないで」 「でも、ずっとこのままはイヤ…!」 「あと少しだけ。あの忌々しい男の記憶が消えるように、じっくり進めましょう」  そう言ってのんびりと構えるから、私は焦りともどかしさで気が遠くなりそうだ。ヴィンセントの上に跨った私の秘部は膨らんだ雄をみっちりと咥え込んでいる。  どう動かせば良いところに当たるか考えるだけでゾクゾクとした期待が背中を駆け上がる。だけど、どうしてか意地悪な彼は私に長い間待てを強いた。そこにあるのに思うように動けないのは、とても苦しいこと。  考え事をしていたら腰が少し動いたようで、ヴィンセントは少し口角を上げて私の腕を引いた。 「我慢出来ないんですか、先生?」 「ん…先生って、呼ばないでってば…!」 「じゃあ、挿れたい?ジュディ…?」 「ーーーーっ!!」  耳元で聞こえる掠れた声に応えるみたいに下腹部が疼く。  そのまま耳たぶを歯で甘噛みされれば、私の理性は簡単に飛んでいってしまいそうだ。いつから私の可愛い犬は、こんな厭らしい芸を身に付けるようになったのだろう。 「っは、かわいい……分かりやす」 「意地悪…!貴方ってすごく意地悪ね、」 「ごめんなさい。面白くて」  文句の一つでも言ってやろうと睨み付けると、ヴィンセントは私の腰を掴んでぬるっと自身を引き抜いたかと思うと、一気に打ち付けた。  頭の奥でチカチカと星が回るような感覚を覚えながら、私は必死でその肩にしがみ付く。予告もなく始まった抽挿は私の自我を奪って下品な女へと落とす。 「ジュディ、愛してる…大好き」 「………ああっ…!」 「好きって言ったらキュンってするの嬉しい。ねぇ、この身体も心も全部全部ちょうだい」 「ん、あん、耳のそば…で、話すの禁止…!」 「お願い……もう、何処にも行かないで」  その愛はきっと鉛のように重たい。  形は歪で、一度捕まったら逃げられやしない。  だけど私は彼の手を取って生きていきたいと思う。私が植え付けた種が結んだ実を摘みながら、もう暫くはこの溺れるぐらいの愛情を受け取っていたい。 「離れたくなっても、逃さないわ」  意地悪く笑ってみたら、少し驚いた顔をしてすぐにキスされた。何度も何度も口付けを交わして、私たちはまた手を取り合ってベッドに倒れ込む。  そうやって、夜を紡いでいく。  私が知ったこの愛を抱えて。 End.
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