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婚姻の儀
ソフィオーネが選んだのは、弟のペルロだった。
婚姻の準備は粛々と進み、式が執り行われる当日となった。
純白のドレスに身を包んだソフィオーネは、付き人に手を引かれ歩いていく。
人々に見守られ、一歩、また一歩と、想い人へ向かって歩いていく。
この群衆の中に、夫となる者の次に愛していた者の姿は無い。式の数日前、遠征先で兵団長が死んだという知らせがもたらされたばかりだった。
男の隣りに立ち、司祭の言葉を聞く。
「病めるときも健やかなるときも支え合い、愛することを誓いますか?」
「……………………」
「……はい、誓います」
本来なら夫となるべき者が先行して応えるべきなのだろうが、沈黙を続ける男の代わりに妻となる者が先に返事をした。
魂の片割れともいえる、双子の兄が死んだばかりなのだ。妻となる自分が彼を支えていこう、ソフィオーネはそう思った。
「……誓う、と言ったね? ソフィ」
隣りに立っていても聞き落としそうなほどの囁きに、ソフィオーネは違和感を覚えた。
ベールのすき間から、ゆっくりと隣りの男を見た。
「私も誓うよ、ソフィオーネ」
「あ……」
驚きの表情を向け唇を開こうとする花嫁に、花婿はにっこりと微笑んで口づけた。
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