1:パーティ追放

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1:パーティ追放

 弓使い(アーチャー)の人口は少ない。  理由は簡単だ。圧倒的に不人気だからである。 「は?リチャード。今、なんて言った?」 「だから、何度も言わせるなよ。……パーティを抜けてくれって言ったんだ」  そんなワケで、弓使いである俺は、現在。絶賛勇者パーティから追放されようとしているところである。ちなみに、リーダーである勇者リチャードは、俺の幼馴染である。つまり俺は、一番付き合いの長い幼馴染に、パーティの追放を告げられているワケだ。  え、ナニコレ。地獄? 「いや、俺も言いたくはねぇよ。でも、そろそろ皆の間でも不満が出てるんだわ。だからさぁ、リーダーとして言わないワケにはいかないんだわ。俺も辛い立ち位置なワケよ」  いーや、ウソつけ。ほんとに辛いと思ってるヤツは、わざわざメンバー全員が見てる前でそんな事言わねぇわ。  しかも、ここどこだと思う?  街で一番盛り上がっている冒険者の酒場だからね。そもそも、店に入った時点で「勇者一行」として注目を集めていたところに、突如として開幕したこのパーティ追放劇だ。おかげで、他の冒険者達からもめちゃくちゃ好奇の視線を向けられてしまっている。なんなら「なにアレ、ヤバくない」という声まで聞こえてくる。  あぁ、うん。ヤバイね。  持っていた固くパサついたパンが、力の抜けた手から零れ落ちる。口の中はパサパサだ。それは、安いパンのせいなのか、それともこの状況のせいなのか。 「そういう、俺の止むに止まれぬ立場。お前なら分かってくれるよな?テル」 「……あ、あぁ」  そう、俯きながら言葉を紡ぐリチャードの姿に、俺は喉を詰まらせながらなんとか返事をした。同時に、背負った弓がギシリと音を立てる。もちろん、落ちたパンを拾う雰囲気ではない。 「それに、俺達もだいぶレベルが上がってきたし、そろそろ大本命の魔王城に行きたいワケよ?となると、今後はパーティ内の少しの綻びすらも命取りになる」 「……まぁ、そうだな」  つまり、そのパーティ内の綻びが〝俺〟と言いたいのだろうが。それより、ちょっと待て!?  さっき「辛い立ち位置」とか「病むに止まれぬ立場」とか言ってたくせになんだよ。俯いた顔の下で、めっちゃニヤニヤしてんじゃねぇか!無駄に顔が良いせいで、そういう下衆っぽい笑みもサマになるから性質がわりぃんだよ!  でも、顔はさすがにもう少し頑張って作ってくれ!十八歳でもそのくらいは出来るだろ!?リーダーなんだからさ!  と、俺は目の前に立つ、リチャードに向かって口にしそうになるのをグッと堪えた。もう、口の中がカラカラ過ぎて何も喋れそうにない。 「だからさ、テル?」  すると、目の前の若い剣士がポンと俺の肩に手を置いた。  パーティメンバーからの冷たい視線、そして更には酒場に集まる多くの冒険者達からの好奇の視線。それらを一心に受けながら俺は「勇者パーティから追放されそうになっている弓使い」から、晴れて――。 「パーティ、抜けてくれないか?」  「公衆の面前で、勇者パーティから追放された弓使い」になったのであった。  はい、ここ地獄決定!
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