2:職業:追放弓使い

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2:職業:追放弓使い

 弓使いにはソロプレイヤーが多い。  理由は簡単だ。その方が、本人にとって一番都合が良いからだ。 「っと、ヤベェな。コレ……!」  そんなワケで、弓使いである俺は、現在。一人でダンジョン攻略を行っている最中である。 そして、漏れなく周囲を敵に取り囲まれてしまっている。  うん、これはギリ地獄じゃない!まだイケるやつ! 「あの時と比べたらな!」  グルルルルッ!  鈍い唸り声が、俺の周囲を取り囲む。俺は手にした弓に力を籠めると、敵の数と位置を確認する。 「敵は、全部で五体か……ん?」  いや、空中にいるモンスターも合わせたら全部で七体だった。いやに数が多い。さすが、Sランクのダンジョンなだけはある。 「えっと……矢は足りるか?」  俺は背中に背負った矢筒に触れ、手の感触だけで弓の数を確認する。 「あー、クソ。六本しかねぇわ」  さすがにケチり過ぎたか。なんて、ぼやいたところで仕方がない。俺は今一人なのだ。あるものでどうにかするしかない。 「最初はアイツらからヤるか。残ると面倒だし」  空中を縦横無尽に舞う敵に狙いを定め、弓を構えた。  そして、短い呼吸の後、一気に矢を放つ。その瞬間、矢が凄まじいスピードで俺の手元から飛び立ち、敵の急所を貫いた 「っし!」  ハッキリとした手ごたえを感じて、思わず小さく声が漏れる。その後も、俺は絶え間なく矢を放ち続け、次々と敵を地上へと撃ち落としていく。今の所、百発百中だ。 「うん、俺凄いじゃん」  と、自画自賛したものの、そんな事は一切自慢にはならない。ソロの弓使いにとって一発で敵を仕留める事は必須条件だ。  なにせ、仕留め損ねても守ってくれる前衛は居ないのだから。 「……さて。もう矢は無い、か」  最後の矢で倒れた敵を見届けた直後、俺はすぐさま後ろへ下がった。残りは地上の敵一体。刺すような殺気のせいで、肌がヒリつく。 「剣は専門外なんだけどな」  呟きながら、俺は腰の剣に手をかけた。基本、後衛である弓使いの防御力はガバガバだ。本来ならば、前に出るのは得策ではない。しかし、仲間の居ない戦闘ではそんな事も言ってられない。なにせ、殺るか殺られるか。  この【ソードクエスト】というゲームの世界は、ゲームであってゲームではないのだから。 「クソっ!ゲームで遊んでた時は、弓使いって格好良くて好きだったんだけどなっ!」  俺は体勢を低く取ると、勢いよく地面を蹴った。  この狼の肉は、皮も含め高く売れる。コイツさえ倒せれば、今後しばらくの飯代もまかなえるし、なにより――! 「新しい矢が買えるっ!」  ガァァァァッ!  あぁ、クソ!何回やっても敵と真正面から対峙するこの瞬間は怖い。  でも、それでも改めて思う。前世の時よりも、勇者パーティに居た時よりも、一人の方が断然マシだ、と。 「っくぅっ!」  ナイフの先が固い皮膚を突き破り、グニュリと柔らかい肉へと食い込むのを感じた。何度やっても嫌な感触だ。しかし、俺はそのナイフの柄に力を込め、更に奥までナイフを突き進める。 「っぐ」  心臓を一突き。両手で握りしめた短剣を通して、俺の手にドロリと生暖かいモノが触れる。次の瞬間、狼の体から力が抜け、剣にその重みの全てが加わった。俺は剣を一気に狼の体から引き抜くと、倒れた敵の亡骸を見つめながら肩で息をした。 「っはぁ、っはぁ。よしっ!」  完全に息絶えている。  同時にツンと、鼻を掠める血の匂いに、俺はグルリと周囲を見渡した。そこには横たわるモンスターの死体がゴロゴロと転がっている。その光景に、俺は一気に肩の力が抜けた気がした。 「やった……全部、ぜんぶ、俺一人で……倒せたんだ」  なんだ。やれんじゃん、俺一人で。  前衛だから俺の方がエライんだと上から目線で偉ぶってくる勇者も、お前なんか留めを刺すだけの討伐数泥棒だと軽蔑した目を向けてくる魔法使いも、なんで後衛なのに怪我なんてしてるのと回復を渋ってくるヒーラーも、ここには居ない。  でも、勝てた。 「っっよっしゃー!俺はっ、一人でもやれるんだーー!」  俺は返り血をガッツリとその身に浴びながら、その場で飛び跳ねた。討伐数七。これは、全部俺が一人でやり遂げた結果だ。  仲間が居るから強くなれる。そう、子供の頃は大好きなゲームに教えて貰ってきた。でも、この【ソードクエスト】というゲームの世界にやって来てから、俺はハッキリと理解した。 「一人ってスゲェ楽!」  仲間なんていらねぇわ!人間関係なんか、クソ食らえ!
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