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「さて、このあとどうしよう」
「わたし崖線をたどってみたいなあ」
妻は揚げたての天ぷらをさくりと噛みきった。
「大変ですよ」
「行ってみたいです。圭一さんとだったら絶対面白いと思うんです」
「三〇キロも続くんですよ。歩けますか。もともとが河岸段丘だから坂も多い。平坦な場所を歩いているつもりが、突然崖の上に立っていたりするし、そこからほぼ垂直みたいな崖を下ることもある。引き返すことはできないかもしれない。それでも行きたい?」
妻はそれでも行きたい、と首を縦に振った。
過去の僕らは未来の僕らになれるだろうか。未来の僕らは過去の僕らを祝福するだろうか。
「じゃあ行ってみましょう。女将さん、お勘定」
僕は奥へ向かって声をかけた。
了
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