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妻が恋をした。
少女のように頬を染めて、好きな人ができた、と僕に言う。
「その人、水生植物園でずっと水面を見つめていたの。何を見ているんですかって声をかけたらね、水が湧いているのを見てるって言うの。ただの汚い池だと思って気にしたこともなかったけれど、よく見ると確かに流れが速いところと止まっているところがあるの」
その時の記憶をたどっているのか、妻は楽しそうだ。
僕はだまってコーヒーを淹れるために湯を沸かし始めた。
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