第六話   五日間

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 ≪模倣犯≫ ≪銃殺≫ ≪絞殺≫  比較的多く名前が上がるのは3人。≪模倣犯≫は特に、多少なりとも訓練を受けた復讐者を7人は殺している。殺し慣れているのだろう。島流しにあっていたとしても衰えない殺人活動。咄嗟の状況にも適応できる対応力。殺す度にパフォーマンスが上がるタイプかも知れない。誰彼構わず殺し続けていることだろう。  業の狙いは、そこだった。  みんな張り切っている。張り切って殺しに出て、殺して、殺されて。人数が多ければ遭遇率も高い。遭遇率が高ければまとめて一網打尽にされることもある。安全地帯だと言うここも、居場所がばれてしまえば待ち伏せ、トラップをかけられる可能性もある。参加者の内容は未知数だ。慎重に行動しなければ、虚をつかれ、殺される。  だから待った。待って、待って、待って。はやる気持ちを抑えながら。皆殺しにして勝ち抜いて、たった一人を殺しに行きたいと常に思いながら。  皆、存分に殺し合え。  人数が減って仕舞えばあとは俺だけで殺れる。  厄介な奴がわかって、疲労や外傷を負っているところを狙えればより良い。  静かに自らを鼓舞し、絶好の機を待った。それはまるで、山盛りの餌の前に『待て』と命じられた犬。涎が止まらない。啜ることも忘れて、ただ目の前の餌を見つめ続ける。ただ違うのは、誰に課されたわけでもない。自分がそう判断したのだ。『その方が、きっと美味しいから』と。本能か。調教か。どちらにせよ、無意識で効率的で個性的な味わい方。  三日月のように口が歪む。抑え切れなくなった欲望が唾液となって溢れ出す。  かつては『仔犬(パピー)』と呼ばれた男は、理性と本能と欲望の階段に足をかけた。  —— 囚人≪模倣犯≫は20人目を殺害! 215ポイントとなりましたぁー!! おぉっと続いて復讐者≪銃殺≫は150ポイント達成! ≪絞殺≫も次に狙いを定めています!! 残り参加人数は復讐者4名! 囚人5名! 合計9名です! ——  アナウンスが扉が流れた。  満を辞して、業は目を見開き立ち上がった。  扉は開かれた。  
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