第七話   参加

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第七話   参加

「ぃっ!?」 「っ」 「ぁっ、だす、け——」  扉を開けると、そこは死地だった。  業の目の前に転がる生首。血がまだ吹き出している。血管が拍動を止めていない。本来は血管を隠しているはずの筋肉や皮膚は、まるでネジ切れたように乱れていて汚い。  今まで裏の仕事に近いことをしていた業も、生首になる瞬間は見たことがなかった。いざ目の当たりにして、体が硬直した。いかに体が大きく、気も硬く、武者振るいをしていたとしても。「いざ行かん」と踏み出した一歩目でこの状況とは思わなかったのである。体は硬直し、目は瞬きを忘れ、音は鼓膜を貫通した。  まさかまさか。部屋の防音は優秀すぎたのだ。  転がる首が、下を向いて止まる。その近くに、体が力なく崩れ落ちた。下を向いているはずの首は、どうしてか眼球が動いて、業を見上げているようにも見える。業は頭を見つめ続ける。上から見下す分には毛玉でしかない頭。まだ一線を超えていない足を、頭の横に伸ばした。  瞬間。落ちた首が爆発した—— 「私の視線を奪うなんて許せない。私を見て♡」  ——かのように見えたが、業の視界の外側にいる女がやったのだ。  頭は弾け、中身が飛び散る。それはそう距離のない業も例外なく浴びた。驚きはすでに引いていた。所詮はどこの誰とも知らない囚人、もしくは復讐者。悲しみも怒りも何もない表情で顔についた中身を拭い、声のした方にようやく関心を示す。  全身黒いボディースーツに身を包み、業を見て舌を舐めずりをした。その手に持たれているのは、鞭。黒か、紫か。艶やかな素材でできたもの。 「冷たい目♡ でも、新鮮でいいかも♡」  飛びのいた。その先で業がいた場所を見れば、鞭が扉を叩いていて轟音が鳴り響いた。鞭は若干緩んだ後、業に目掛けて飛んでくる。 「!」 「捕まえた♡」  咄嗟にサバイバルナイフを向けた業だが、蛇のように素早くしなやかなソレは、ナイフを避け、腕を巻き込んで首に巻きついた。残った手で外そうと試みるが、特殊な何かなのか解けない。 「あなた、部屋から出てきたってことは復讐側でしょ? ラッキーね。このまま殺してあげる♡」 「っ!」  鞭が締め上げられる。腕の骨が軋み、首を圧迫する。 「見て♡ 私を見て♡ あなたを殺すのは私♡ あなたを苦しめているのは私♡ 私を忘れないで♡ 死んでも忘れないで♡ 『死んだ』という消せない事実は私が刻んだのよ♡」  女——このゲームでの名称は≪絞殺≫——は、恍惚とした表情で叫ぶ。反対に、業は冷めた目で≪絞殺≫を見続けた。もう始まっている。足を踏み入れたのだと、細い息を吐き出した。  業はサバイバルナイフを持ち替え、腕と首の隙間に刃を差し込む。幾重にもなっているうちの一重を切断した。 「っ、ふぅ」 「あらぁ?」  切断された先は締める力を失った。幸い、根元の方を切れたらしい。豪の首に巻きつく鞭は一周もできないほどの短さになった。それでも巻きついてくる鞭をさらに切ろうとした瞬間、脱力したように緩んだ。  持ち手が目の前に飛んできた。
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