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「やっぱり、さすがあの社長の息子さんだけあって圧倒的αでイケメンみたいですね!そんなハイスペックなら年下なんて全然気にならない!お近付きになりたい~」
「安心しろ、お前じゃ相手にされないから。橘さんおはようございます」
「おはよう、瀧川くん」
「たっきー酷い!」
仕事しろ、と花野井くんを連れて行ってくれる彼は瀧川進くん。花野井くんの同期で、容姿も性格も全くの真逆の彼らはとてもいいバランスで頼りになる後輩たち。
「御門ジュニア戻ってきたんだな、久々に見たら若い頃の楓珠そっくりでクローンかと思ったわ」
「水嶋さん、おはようございます」
おはようさん、と自分の席からヒラヒラ手を振る彼、水嶋知弦さんがこの秘書室のトップ。今は僕がメインで社長に着いているが、その前に担当していたのが水嶋さんだ。
彼と社長は学生時代からのご友人だそうで、公私共に信頼のおけるパートナーだと伺える。
「社長から楓真さんの社内案内を頼まれているので、また連絡があったら行ってきます」
「はいよ」
「え~いいなそれ僕が行きたいです~」
「お前はさっさとこの資料まとめろ今日の会議で使うんだから急げよ」
「たっきー嫌い…」
「花、誤字脱字気をつけろよ~」
「ボスも嫌いぃ~~」
席に着き準備しながらつられてクスクス笑ってしまう。気づけばいつの間にかさっきまでの緊張が嘘みたいに肩の力がぬけていた。
花野井くんの元気はいつもこの秘書室を明るくする。
僕以外全員βの彼らにはΩ故の事情で迷惑をかけてしまう事が多いのに、嫌な顔ひとつせず助けられてばかりだ。だから僕も、できる事は何でもする。
「花野井くん、誤字脱字チェックするからできたら見せてね手伝うよ」
「せんぱぁ~~い!好きっ」
つい一瞬前までシュンとしていたのが嘘のように、満面の笑みを携えた花野井くんの元気な声が部屋の外まで響き渡っていた。
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