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この世には男女の性の他にもうひとつ第二の性と呼ばれるα、β、Ωという分類が存在する。
αはどの分野でも圧倒的なカリスマ性を放ち、誰をも魅了する頂点的存在。
正に、楓珠さんはαそのものだった。
そんなαが唯一敵わない存在といえるのがΩ。
身体的にも社会的立場としても弱く、虐げられる存在として世間一般から認識されているΩだが、実際は違う。
αはΩのフェロモンに強く惹き付けられる。
自分を守ってくれるより強いαを求め手に入れる為、そのフェロモンでαを誘惑し自分の虜にするΩの習性。虜となったαは誰からもそのΩを奪われないよう自分のモノとして縛り付け生涯を通して愛し、離さない。
それを番関係と呼ぶ。
Ωのうなじに刻まれるαの噛み跡。
その刻印を持つΩは、付けたαのフェロモン以外認識出来なくなるのだが、その逆もしかり。
逃れることのできないΩの発情期を不幸な事故にしない救いの関係。
けれど、この世界はそう都合のいいシステムだけでは終わらなかった。
一度結んだ番関係
それはどんな事があっても生涯絶対に解消することが不可能な、未来永劫永久的に続く関係。
そう、それは彼…楓珠さんも例外ではない。
彼は随分前に、番関係にあったΩの奥様を病気で亡くしていた。
誰もが求めるこの完璧なαは、亡き奥様のフェロモンしか感じない……つまり、今後一生どのΩのフェロモンにも惑わされない、という事。
そして僕は――どんなαのフェロモンも一切感じる事が出来ない欠陥Ω
そんなΩが安心してそばにいることが出来る楓珠さんの隣は常に平穏で満ち溢れていた。
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