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「見付けた、俺の運命――」
「え、」
彼のせいで止まったこの時間を再び動かすのもまた彼で、驚愕の表情から一変、今にも泣き出しそうな表情を見せたかと思えば残りの距離を一気に詰めるべくその長い脚を最大限生かし、まさしくゼロ距離を体現するかのように、気付いた時には彼の腕の中に閉じ込められていた。
「見付けた……見付けた!やっと会えたっ」
「ちょ、え、何――」
あまりにも予想外で急なことにすぐさま行動ができず、上手く働かない頭は言葉にならない言葉を吐き出すことしかできない。
それは一番そばで見ていた楓珠さんも同様で
「楓真くん!?こら、つかさくん困ってるから一旦離しなさい」
「つかささんって言うんですか?俺の運命は名前まで素敵だ」
「楓真くん~~…」
あちゃーと顔を覆う楓珠さんを横目に、笑顔が眩しいイケメンが宝物を扱うかのように今一度つかささん、と僕の名前を呼ぶのをどこか他人事のように見つめてしまう。
運命――
一目見ればお互いだけがわかるこの世のどこかに存在すると言われる唯一無二の魂の番。
この人は僕をそう呼ぶけれど、僕は何も感じない……このポンコツな身体はこの瞬間も一切フェロモンを感じ取ることができない。
Ωとしての無能さを突き付けられているなんてつゆにも思わない彼の盛り上がりは一人でに最高潮まで登っていく。
今一度ギュッと強く抱きしめられたかと思えば抱擁は解かれ、そのまま腰を抱かれて楓珠さんと向き合う形へ。
そして、冒頭へと繋がっていく。
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