疑惑

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次の日、秀明はなんとか理由をつけ署を抜け出し、1人で安藤満の家に向かって車を走らせていた。 奏たちには既に住所を伝え、先に向かっていてくれと言っておいた。 日「……勝手に家の中に入ってたりしないよな?」 日下は不安を抱えながら、車の速度を少し上げた。 秀明が安藤の家に着くと、奏とかなえが玄関の前に立っていた。 か「もう、遅いよ秀明」 日「悪い。中々抜け出せなくて」 秀明はそう言って顔の前で手を合わせた。 日「……にしても、2人ともちゃんと待ってたんだな。てっきりもう中に入ってるものかと」 奏「入ろうとは思ったんですけど……」 か「私たち鍵持ってなくて」 日「なるほど。業者の人には頼んであるからすぐに来ると思う」 それか5分もしないうちに業者が到着し、鍵を開けてくれた。 日「2人とも、絶対に俺のそばを離れるなよ?」 秀明の言葉に2人は頷いた。 秀明はゆっくりとドアを開けた。 ドアを開けると、涼しい風が吹き込んできた。 3人はゆっくりと足を進める。 秀明はトイレ、風呂、リビングと1つずつ部屋を確認していく。 次に3人は2階に上がった。 2階は1階と違い、なにやら重い空気が漂っていた。 秀明は1階同様次々とドアを開けていく。 そして、最後に奥の部屋を残すのみとなった。 日「……」 秀明はゆっくりと奥の部屋のドアを開けた。 日「!!」 か「うわぁ……」 奏「これは……」 部屋の中を見て3人は驚愕した。 その部屋は、一面に写真や新聞、週刊誌の切り抜きが貼り付けられていた。 カーテンは閉めきられ、机にはハサミやカッターなどが置かれていた。 日「スゴいな……」 か「ある意味異常ね」 奏「まるで、ドラマとかで見るストーカーの部屋みたい」 日「ん?」 日下はある記事に注目した。 日「『おもちゃ箱』に関する記事……」 そこには、『おもちゃ箱』について書かれた記事の切り抜きや写真が多く貼られていた。 か「この写真って……」 日「あぁ、今まで被害に遭った人たちの写真だ。しかも、その被害者の家族の写真もある。多分、執拗に取材を重ねてたんだと思う」 奏「……」 奏は、秀明とかなえの会話を聞きながら部屋の中を見回していた。 奏「?」 奏は1枚の写真が落ちているのを見つけた。 しかし、その写真はロッカーのドアに挟まれていた。 ドアの周りにはスクラップブックが散らばっており、その中に入っていた写真が散乱していた。 奏は挟まっている写真を手に取った。 奏「!! 日下さん!!」 日「!! どうした!?」 奏「これ」 日「!! これは……」 その写真には、両手両足を拘束され、猿轡を噛まされた安藤満が写っていた。 か「どういうこと!? 安藤は犯人じゃないの?」 日「分からない。けど、もし犯人が別にいるなら、安藤が危ない。急いで探し出さないと」 日下が焦っている横で、奏は先ほど写真が挟まっていたロッカーを見つめていた。 奏「(なんであんなところに写真が……?)」 奏は恐る恐るロッカーのドアに手をかけ、勢いよくドアを開けた。 奏「うわぁぁぁ!!」 奏は尻餅をついた。 か「奏!?」 日「奏君!? どうした!?」 奏「あ、あれ……」 奏はロッカーを指差した。 か「キャッ!!」 日「なっ!!」 ロッカーの中には、顔を潰され、血にまみれた安藤満の姿があった。
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