振り出しと新たな事実

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安藤の死体は写真と同じく、両手両足を拘束され、猿轡を噛まされていた。 服装も写真と同じだった。 違うところと言えば、顔が潰され、顔面から肩にかけて血に染まっていることだ。 体の至るところに殴られたような痕があり、ロッカーにも血が飛び散っていた。 か「うっ……」 日「かなえ、見ない方がいい」 秀明はそう言ってかなえを抱き寄せた。 奏「……」 奏は落ち着こうと必死に平静を装っていた。 秀明は死体に近づいた。 日「顔が潰されていて判別が出来ないな。奏君。ちょっと写真を見せてくれるかい?」 奏「あ、……はい」 奏は秀明に写真を渡した。 日「……服は全く一緒だ。けど、頭のいい犯人なら自分の服を着せて他人に成り済ましている可能性は十分ある。とにかく、署に連絡して大至急鑑識を呼んでもらわないと」 奏「……日下さん」 日「ん?」 奏「これ、多分安藤本人だと思います」 日「え?」 奏「ロッカーにも血が飛び散ってるってことは、犯人はロッカーの中で顔を潰したってことです。安藤にとってスクープ写真は大事なもののはず。そんなものがある部屋で殺人をするとは思えません。それに……」 日「それに?」 奏「安藤には、死体をすり替える理由がないです。ここは安藤の家。DNAを調べればすぐに本人だって分かるし、死体をすり替えるということは、疑われることを想定していたということ。わざわざ死体をすり替えるなら、そのまま何処かへ逃げた方が早いです」 日「……確かに。ということはやはり、犯人は別にいるってことになるな」 奏「……はい」 日「……とりあえず先ずは署に連絡しよう。話はそれからだ」 秀明はそう言って携帯を片手に外に出た。 か「奏……」 奏はかなえの呼び掛けに答えず、死体をただ見つめていた。 奏「……一体どうなってんだよ」 奏の問いに答える者は誰もいなかった。
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