めぐり合わせ

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めぐり合わせ

 俺が美桜(みお)と出会ったのは近所の幼稚園だった。出会ったと言っても母親同士が仲良く、俺たちは言葉を交わす事のない顔見知り程度だった。小学校に上がりクラスメイトになっても友達になる事もなかった。  ごくごく普通の家に生まれ俺たちは、ごくごく普通の町で育ち。何の不満も不自由もなく。幼い身にはそれがすべてで、全宇宙だった。  運命と言うには不確かな、か細い糸が交わったのは小学三年の二学期だった。作文発表で美桜が語った、峠の向こうにある。星空が好きで遠い場所に想いを馳せていた俺が、町の外の別世界に魅せられたのは必然だった。その日を境にして、俺は美桜に街の事をアレコレと聞きに行った。すると美桜は、俺に星空の事をアレコレと聞いて来た。  町外れの雑木林に二人だけの秘密基地を作った。沢山の本を持ち寄って、夢や希望を語り合った。いつしか町を出たい。街に行きたい。という美桜の夢が、俺の夢にもなっていた。美桜がどれほどの想いで夢見ていたかなんて、ガキの俺は考えもしなかった。  永遠とも思える時代は一年足らずで終わりを迎えた。小学四年の夏休みに入った頃、母親から美桜が転校したと聞かされた。友達だと思っていた。だから何も告げずに消えてしまったことに怒りよりも失望で胸がいっぱいだった。  やがて小学六年になった俺の元に一通の手紙が届いた。それは薄れかけた記憶の中の少女。美桜からだった。
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