プロローグ

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プロローグ

 夕映えする高台にある円柱形の貯水槽。ぐるりと巡った欄干に、小さな影が並び冬の空を眺めていた。薄っすらと見え始めた月の傍らに、ひときわ明るい金星が瞬いていた。 「金星って、いっつも月の傍にいるよな」 「なにそれ。ヤキモチ?」  少女は空を眺める少年の顔を、髪を揺らして悪戯っぽく覗き込んだ。少年はその黒目がちな大きな瞳をチラリと見て反対側の空へと顔を向けた。 「金星もこっちを見て私にヤキモチやいてるかなー」  少年に聞こえるように呟いた少女は、足をブラつかせながら暮れ行く空を仰ぎ見た。
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