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[エピローグ]
「久しぶり」
病室の扉を開けると、病室だというのにクラッカーを鳴らした痕跡があった。
「あら、よく帰って来たわね」
智恵子はもうすっかり良くなったようで、上半身を起こして崇と話し込んでいたらしい。
「ただいま。本当、良くなって良かったよ」
「おぉ、孝昌! これでやっと家族が揃ったな。ーーそういえばお前、仕事はこんなに休んで大丈夫なのか? たいそう今更だが」
そう、今更だが、久来はここ数日全く働いていないし帰る気配すら見せていない。
「実は……こっちでやり直そうと思って。横領をした同期の濡れ衣を着せられてクビになっちゃったんだ」
父が固まった。
「だから花菱神社になんて頼むなと言ったんだ!」
「? どういうこと?」
「花菱神社にお願いごとをすると気に入った願いは叶えてくれるのよ。ちょっと叶え方が強引だけど」
“そろそろ息子の顔が見たいです”ーーそう、智恵子は願っていたらしい。
「まぁ、良いよ。結果的に僕も帰って来れたしさ」
花菱神社のご利益についてはまたカナタにあったら詳しく聞こうと久来は心に決めた。
(久しぶりじゃなくて、また、近いうちに)
ーーend
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