黒っぽい白と白っぽい黒

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次にサフィアが目を覚ますとすぐ目の前にヴァルクトの優しい眼差しがあり、自分が裸のまま彼の腕の中に抱きしめられていることに気づく。 「気づいたか」 「ヴァルクト」 サフィアが柔らかい微笑とともに名を呼ぶと、ヴァルクトは愛しげにサフィアの銀髪を撫でた。 「身体は平気か?」 「平気」 「すまない。少し無理をさせてしまった。おまえは……初めてだったのに」 ヴァルクトは長い指でサフィアの手をとり、優しく撫でた。 「そんなことない。あなたにたくさん愛してもらえて幸せだよ」 「……可愛いことを言う」 天蓋つきのベッドの中でふたりが睦み合っていると、そこにひとつの人影が近づいてくる。 「ヴァルクト様、お寛ぎのところをお邪魔して申し訳ありませんが、そろそろ私にその方を紹介してくださいませんか」 「アエシャ」 アエシャと呼ばれたその人物は、真っ直ぐな長い銀髪を後ろでひとつに結い上げ、深い藍色の瞳をした知的な美青年だ。 「サフィアだ。たったいま俺のものにした。これからはここで一緒に暮らす」 ヴァルクトが腕の中のサフィアを見つめながらそう言うと、アエシャはその場に跪き、深く頭を下げた。 「サフィア様、私はヴァルクト様の身の回りのお世話をさせていただいているアエシャと申します。以後、お見知りおきくださいませ」 サフィアはヴァルクトの黒衣に包まれたまま清廉な笑顔でそれに答えた。 「こちらこそ、よろしくアエシャ」 アエシャは顔を上げて正面からサフィアを見つめると、その一見冷たそうな美しい藍色の瞳を細めた。 「……これはまた美しい……宝石のような方だ」 「そうだろう。俺のひと目惚れだ」 ヴァルクトが口元に笑みをたたえてそう言うと、サフィアはその腕の中で頰を染めた。 「では、早速サフィア様にお召しものとお茶をご用意いたします。ひと息つかれましたらご出立の準備をなさってください」 「出立?どこへ?」 ヴァルクトが怪訝な顔をして尋ねると、アエシャは満面の笑みとともに告げた。 「人間界へ」
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