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ああ、僕は死ぬのかとぼんやり思った。
そして枕元に佇むヴァルクトを視た。
やっぱり悪魔だったんだ。
僕は驚くよりも納得した。
だってさっき見た天使よりヴァルクトの方が断然綺麗だったから。
「とうとう死神が迎えに来たみたい」
僕がそういうと、ヴァルクトがそばにやってきた。
「天使庁ってなに」
「天使の統括機関」
「悪魔庁はないの?」
「似たようなのはある」
ベッドの脇に来て膝をついたヴァルクトに僕は言った。
「僕は死んだら天使になるの?」
「おまえの魂は美しいから」
僕は膝をついて見つめてくるヴァルクトの頬に手で触れた。
「僕は天使になんかなりたくない」
ヴァルクトの冷たい指が僕の手に重なる。
「神が決めることだ」
「神なんて知らない。僕がベッドの中で何を祈っても願っても、なにひとつきいてくれなかったくせに。天使にしてやるだなんて、ふざけてる」
僕の瞳の中に闇い光が宿る。
「僕は天使になんかならない。僕は、悪魔になりたい」
「サフィア」
「ヴァルクトと一緒にいたい」
ヴァルクトは困ったような顔をした。
「おまえは綺麗すぎて、悪魔にはなれない」
「じゃあ汚して」
僕は真っ直ぐにヴァルクトの目を見つめて言った。
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