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「……ああッ!」
「サフィア……平気か?」
行為の合間にヴァルクトは何度も僕を気遣ってくれる。
でも、僕は……
「……平気……だから……もっと……」
「おまえ……体が……」
ヴァルクトの指が僕の乱れた前髪を掻き上げ、優しく頬を包む。
「……もっと……もっとヴァルクトを感じたいんだ……」
「サフィア」
「……んでもいい……今死んでもいい……だから……だから……」
いまこの瞬間に死ねたらどんなに幸せだろう。
僕には何もなかった。
何もなかったんだから。
ヴァルクトに出会うまでは。
「……お願い……お願い、ヴァルクト……あなたの全部を……」
ヴァルクトは一瞬、眉根を寄せて辛そうな表情をしたあと、一気に僕を貫いた。
「…………ッ」
ああ……
本当に、いま死ねたら……
どんなに……
そこで世界が真っ白になって、
全ての音が止んで、
全てが止まった。
ずっと苦しかった胸の痛みも、苦しい呼吸も常に僕を悩ませた頭痛も。
全部がなくなって。
体がすごく楽だ。
あれ、僕はどうしてたんだっけ。
瞼を開けると、すぐ目の前にヴァルクトの瞳があった。
僕は彼の腕の中にいた。
ああ、そうか、僕はこの人と……
僕は手を伸ばしてヴァルクトの頬に触れた。
ヴァルクトは悲しい目をして言った。
「……お別れだ、サフィア」
ーーーーえ?
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