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天使が何か言っているけど僕にはもう聞こえない。
こんな翼いらない。
天使になんかならない。
美しい魂も天界も神も……
「僕には関係ない!」
「サフィア!だめだ、やめろ!」
僕はヴァルクトを振り返った。
なんで悪魔のくせにそんなに優しいの?
なんでそんな泣きそうな顔をしているの?
悪魔ってみんな、ほんとはヴァルクトみたいに優しいのかな。
これじゃあ完全に逆だよ。
僕の方が優しくない。
僕の方が邪悪だ。
だって僕は、ヴァルクト以外はどうでもいい。
最初小さかった炎は僕の怒りと憎悪と悲しみに共鳴するように、あっという間に強烈な炎の渦となって燃え盛る。
僕は閉じていた両翼を一気に広げ、立ち昇る炎の渦を自分の右手に集中させた。
そして左手で片翼を掴む。
「サフィア⁈やめなさい、何を……」
「サフィア!」
僕は右手に溜め込んだ炎を刃にみたてて一気に振り下ろし、左の片翼を焼き切った。
「なんてことを……!」
僕は自らの手でもぎ取った翼を天使に向かって放り投げた。
背中に激痛が走り、切断部からはおびただしい血が流れ出したけど、僕はむしろ嬉しくて笑った。
「サフィア!」
痛みにバランスを崩して片膝をついた僕のもとにヴァルクトが駆け寄る。
「……おまえ、どうして」
「言ったよね?僕はあなただけのものだって」
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