黒っぽい白と白っぽい黒

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ヴァルクトはまた泣きそうな顔をして僕を腕の中に抱いた。 背中からの血は止まらず、僕の白いローブも髪も、身体中すべてを赤黒く染めていく。 そして純白だった僕の片翼はいつしか漆黒に染まっていった。 黒い翼は堕天の証だ。 「ああ……」 天使は僕の黒い羽を見て両手で顔を覆った。 「なんて酷いことを……」 僕はヴァルクトの腕の中で唇を歪ませて笑った。 「堕天の罪はなに?僕は地獄行き?」 僕の声に顔を上げた天使は、その目に嫌悪と失望の色を浮かべて言った。 「なんて邪悪な……」 「僕の魂はちゃんと汚れたのかな」 「…………」 「これでもう神様の処へは行かなくてよくなった?」 僕の言葉に天使は頭を抱えた。 「神に合わせる顔がありません」 ヴァルクトは自分の黒いローブを脱ぐとそれで僕のことを包み込み、そっと地面に寝かせた。 「ヴァルクト?」 ヴァルクトは天使に向き直り、ひと言告げた。 「代わりにこれを」 そう言うとヴァルクトは鋭い5本の爪で自分の左眼を引っ掻いた。 「ヴァルクト!」 僕は悲鳴を上げた。 ヴァルクトは迷いなく自らの左の眼球を抉り取り、掌に乗せた。 そして呪文とともに息を吹きかけると、それは妖しく艶光る漆黒の宝石に変化した。 「これに俺の寿命の半分と力の半分を移した」 「神に捧げると?」 「今日誕生したばかりの天使を俺が奪った。だから悪魔の半分を差し出す」 「それで釣り合いが取れるとでも?」 天使は冷たい目でヴァルクトを見た。 「何もないよりはましだろう」
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