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天使は少し考えたあと、ヴァルクトに向かって黙って掌を開いた。
「サフィアの罪は俺に」
そう言って、ヴァルクトは手の中の宝石を天使に渡した。
「勝手なことを……こんなことをしてただで済むと……」
その時、真横から眩しい光が差し込んできて、新たな天使が現れた。
「エレクサス、もういい」
「カシアス様!あなた様のような高位の方がこのような場所にいらっしゃるとは……」
エレクサスと呼ばれた天使は驚きに両目を見開きながらも慌ててその場に跪いた。
「サフィア」
カシアスという天使はサフィアの前に歩み寄る。
そしてサフィアを庇うように立っているヴァルクトの左眼に手を翳した。
硬く閉じられたヴァルクトの瞼からは鮮血が溢れ続けていたが、カシアスはそれを一瞬で止めてしまった。
ヴァルクトは驚いてカシアスを見上げた。
カシアスは続けて地面に横たわっていたサフィアの背中の傷も塞いだ。
「どうして……」
サフィアが呟くと、カシアスは柔らかく微笑んだ。
「おまえはもう充分苦しんだ。生まれてからずっと病に苦しみ、自由に外に出ることもできず、常に痛みと闘ってきた。だから神はおまえに救いを与えようとなさったのだ」
「救い?」
「天界へ連れて行き、苦しみのない美しい世界におまえを住まわせるおつもりだった。上級天使として」
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