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ヴァルクトは心配そうに見つめてくるサフィアに微笑んだ。
「おまえは優しいのだな」
サフィアはヴァルクトの硬く閉じられたままの左の瞼にそっと触れると、碧い瞳から涙を溢した。
「……僕は優しくなんかない。僕のせいで……あなたの左目と寿命の半分が失われてしまったなんて……耐えられない」
涙に震えるサフィアの肩を抱き、ヴァルクトは優しく囁いた。
「おまえを得るためなら左目のひとつくらい惜しくはない。それに、数百年の寿命が半分になったからと言って何の問題がある?」
「数百年⁈悪魔ってそんなに生きられるの⁈」
サフィアは目を丸くして驚き、ヴァルクトを見た。
「そういえば人間の寿命は短いのだったな」
「僕なんか16で死ぬところだった」
「おまえはたった16年しか生きていないのか」
今度はヴァルクトが驚いてまじまじとサフィアのことを見つめた。
「まるで赤ん坊だな」
「そりゃ、あなたに比べたら……ってあなたは何歳なの?」
「100年くらいは生きたか。まぁ、悪魔の世界では俺もまだまだひよっこだな」
「100歳……」
サフィアはヴァルクトを見て苦笑する。
人間の目から見たらヴァルクトはせいぜい20代後半くらいにしか見えないからだ。
「そういえば僕って死んだの?今の僕って何?天使?いや、堕天使?もう人間じゃない?」
「おまえは天使だ。魂が美しいから」
ヴァルクトの言葉にサフィアは心底うんざりした顔をする。
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