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「あなたが好き……誰よりも何よりも……好き……」
「……サフィア」
ヴァルクトはかつてない愛しさと焦燥感に急き立てられ、体が熱くなる感覚に困惑する。
それは100年以上生きてきて初めてのことだった。
悪魔同士の交わりは感情よりも感覚ですることがほとんどで、そこには快楽と欲望があるだけだ。切なさや焦燥などはない。ましてや涙など。
それなのに……。
「この気持ちはなんだ」
ヴァルクトはサフィアに初めて姿を見られた時、名前を呼ばれた時、そして初めて肌を合わせた時の心の揺れや、昂ぶりを思い出す。
サフィアを天界に送り出すと決めたくせに、別れの時が辛すぎたことも。
「……あ……ヴァルクト……ヴァルクト……」
自分が与える快感に美しい瞳を濡らし、身を捩るサフィアを見てヴァルクトはたまらない気持ちになる。
「おまえの涙は、私を乱す」
「……ん……んンッ……」
「……おまえを見ていると」
ヴァルクトは濡れた宝石の瞳で自分を見つめてくるサフィアの白い頰を優しい手で包み込む。
「たまらなくなる」
「……ヴァルクト」
優しくしたいと思うし、大切に触れたいと思う。
自分でもよくわからない気持ちが体の奥から湧き上がってくる。
「サフィア、おまえが愛しい」
ヴァルクトはサフィアの頰を濡らす涙に唇を寄せる。
「ヴァルクト……嬉しい」
サフィアは快感に震える白い指でヴァルクトの頰に触れた。
「僕もあなたが愛しい」
「サフィア……」
ヴァルクトはとめどなく湧き上がってくる想いを持て余すように何度も口づけを重ねた。
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