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とりあえず人間界のどの国から探し始めるか決めようということになり、ヴァルクトがサフィアに尋ねた。
「期限はないし、焦ることもないから、おまえの行きたい場所から始めよう。サフィア、どこか行きたい国はあるか?それとも、1度おまえがいた国に立ち寄るか?」
サフィアはヴァルクトの言葉を聞いて苦い顔をした。
「……イギリスには……戻りたくない」
サフィアのひと言で、ヴァルクトとアエシャはすべてを察した。
そこに良い思い出も、会いたいと思う人間もいないということだ。
「わかった。では、行ってみたい国はあるか?」
サフィアは少し考えてから顔を上げ、明るい顔で言う。
「日本」
「ニホン?」
「うん。うちにいた家守りの妖精が言ってた。日本は面白い国だって。四季があって、食べ物が美味しいんだって」
「シキ?」
ヴァルクトは首を傾げたが、アエシャはうんうんと頷いてみせた。
「私もニホンの話を聞いたことがあります。ニホンに行ったらぜひコンビニに行けと」
「コンビニ?なんだそれは」
ヴァルクトはますます不思議そうな顔をしたが、サフィアとアエシャが楽しそうにするのを見て決めた。
「よし、ではまずはニホンに向けて出発だ」
ヴァルクトがそう言うとサフィアは嬉しそうに笑った。
「僕は生まれてからずっとベッドの上にしかいなかったから、あなたと一緒にどこへでも好きな場所に行けるなんて……嬉しい」
サフィアのいじらしい言葉を聞いてヴァルクトは目を細めた。
「そうか。これからは行きたい所ややりたいことがあれば何でも俺に言えばいい。おまえの望みは俺がすべて叶えてやる」
「ヴァルクト……」
見つめ合うふたりを横目にアエシャは小声で囁いた。
「……これは……あてられっぱなしになりそうですね」
こうして黒っぽい天使と、
白っぽい悪魔と、
黒でも白でもない悪魔の3人は魔界を出て人間界を旅することになったとさ。
to be continued……?
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