黒っぽい白と白っぽい黒

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それから、夜の発作のたびに彼が現れるようになって、僕は生まれてはじめて発作が出るのを心待ちにしている自分に気づいて可笑しくなった。 彼は血の気配に吸い寄せられてやってくるのかもしれない。 何度目かの夜、僕は大量の血を吐いて、シーツを汚した。 息も絶え絶えの僕は、苦しくて思わず宙に向かって手を伸ばした。 すると次の瞬間、大きくて冷たい手が、僕のその宙に浮いた手を掴んだ。 僕は驚きのあまり、目を見開いて彼を視た。 「サフィア、苦しいか」 僕の名前……。 はじめて彼に呼ばれた自分の名前は、今まで誰に呼ばれた時よりも甘美な響きに満ちていた。 「辛いか」 僕は彼の目を、初めてみた日からずっと大好きなその冷たく冴えた深淵の瞳を、もっとよく見ようとしたけど、 涙で霞んでみえなかった。 「また、これを溢すのか」 彼はそう言って、僕の手を掴んでいない方の手で僕の涙に触れた。 「熱いな」 僕は発作の苦しさから震える指を彼に向かって伸ばした。 それに応えるように、彼はベッドの横に身を屈め、僕に近づいて来た。 「名前……あなたの、名前をおしえて」 「ヴァルクト」 「ヴァルクト……」 僕がそう呼ぶと、彼は驚いて目を見開いた。 「もう一度……」 「ヴァルクト」
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