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僕は震える指でヴァルクトの頬に触れた。
ヴァルクトは一瞬、ピクリと体を揺らして至近距離からまじまじと僕を見た。
「おまえはどこもかしこも熱いのだな」
「ヴァルクトは冷たくて……気持ちいいね……」
大量の血を吐いたせいで僕は貧血になって、そこで意識を手放した。
そして次に目を覚ましたら、ヴァルクトが僕の上に覆い被さるようにして、僕の唇や首筋、胸元に散った大量の血にその唇で触れていた。
「……僕の血は美味しいの?」
僕が尋ねると、ヴァルクトは僕の首筋に唇を寄せたまま答えた。
「甘い」
「ヴァルクトの栄養になる?」
「ならない」
そこで彼の八重歯が僕の首筋に当たり、僕の体が跳ねた。
「……あッ」
僕は自分の声に驚いて、片手で口を覆った。
ヴァルクトは僕のその反応に不思議そうな顔をした。
そして再び僕の首筋に、今度は意識的に歯を立てた。
僕は片手で口を覆ったまま身を捩る。
「サフィア」
ヴァルクトに名前を呼ばれて、さらに体が跳ねる。
長い指が僕の手を掴み、口から離した。
「だめ……っ」
「なぜ?」
そう言いながら、今度は唇に触れてきた。
「……んぅ……」
ヴァルクトの冷たい舌が僕の舌に絡む。
血の味を確かめるように絡め取られ、抗おうとする手も押さえつけられて、僕は苦しい吐息を吐いた。
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