&夢の中で

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&06 専業主婦だった涼子は、1人で暮らしていくために、働き口を探していた。 以前は、アパレル業界でバリバリ活躍していたが、結婚期に仕事を辞めた。 同期の友達は、たくさんいるが、この不景気で、大半の仲間は、就活を始めていた。 ある日の夕方、学生時代からの親友の由美子が久しぶりに電話をかけてきた。 「涼子、元気?晃さんとは、仲良くしてる?私は、とある仕事を始めたんだけど、美人の涼子なら、この仕事が向いてると思ったのよ。ちょっと、話だけでも聞かない?」 なんか怪しい感じの電話で、会うのをためらったが、仕事の話抜きで、由美子には会いたいと思っていたので、約束してしまった。 &07 由美子との待ち合わせ場所は、麻布台ヒルズ前。まだ、オープンして数年なので、観光客が思い思いに歩いていた。 「久しぶり、由美子」 パステルカラーの花柄ワンピースの涼子は、周りから見ても、芸能人かと思うくらい美人で、すらっとしていた。 「涼子も変わらず綺麗よね」 由美子も黒のスーツに胸元が開いたインナーを着ていて、モデルのような雰囲気を漂わせていた。 「今日は、ありがとう。涼子にどうしても紹介したい人がいてね。それに、いろいろ話したかったのよ」 「私も…」涼子が言いかけた時、由美子の背後に2人の女性が現れた。 1人は、白髪のいかにもマダムという雰囲気の60代の女性 もう1人は、40代のバリバリのキャリアウーマン風だけど、気品のある女性だった。 「由美子さん、そろそろ会場へ行かれては?」 4人で、タワーマンションの38階まで上がって、雰囲気の良い談話室へ案内された。 涼子達4人しか、この部屋には居ない。 そして、60代のマダムらしき女性が、静寂を破った。 &08 「涼子さん、今日は、来てくれてありがとう。お会い出来て嬉しいです。由美子さんからお話は聞いてる?」 「いえ、なにも…」 「あら、そーだったのね。私は○○探偵事務所のオーナーの八神いずみと申します。○○探偵事務所は、女性のみの調査員なの。車の運転とかは、男性がしてくれるけど、基本的には、女性だけね。それで、今回来てもらったのは、あなたにも関係がある話なのよ。」 しばらく沈黙があった。 涼子も、自分に関係ある話で、探偵事務所にお世話になることなど、思い当たることがないのだ。 「最近、あなたの周りで、変わったことが起きてるでしょ?」 ん?なんで知ってるの? もしかして、ウチに盗聴器でも付いてるの? 涼子の思考がグルグルとしていた時に、由美子が囁いた。 「電話で話した時に、なんか様子が変だったので、調べさせてもらったのよ。勝手にごめんなさい。でもね、涼子が心配だったのよ。」 由美子は、この探偵事務所で長年調査員として活動していたのだ。 &09 八神が説明を始めた。 「涼子さんは、ご主人と2人暮らしでしたよね?でも、流行り病で入院中に、ご主人が亡くなって、今は1人なのよね。」 涼子は、下を向いたまま頷いた。 「でもね、この流行り病って、持病があっても亡くなることはないのよ。しかも、この流行り病で、亡くなったのか、なんらかの理由で失踪したのか、パートナーが居なくなる事例が、とても多いのよ。」 それを聞いて、涼子は驚いた。 声が出てしまうほどに驚いてしまったので、周りの3人も不思議な顔で覗き込んでいた。 「涼子さん、何か思い当たることあるかしら?」 &10 晃が未来へ行ってしまって、夢の中で会えるんですよ、なんて、常識じゃあり得ないことを言ったら、3人はきっと頭がおかしくなったの?って言うに決まってると、涼子は、何も言えずにいた。 そんな涼子の気持ちを見透かされているのか、40代のキャリアウーマン風の直子が言った。 「普通じゃ考えられないんだけど…パートナーが居なくなった人達のほとんどの人が、夢で会えるって言うのよ。不思議でしょ?中には、未来で生活してるのを見たって言う人までいるのよ」 そして、八神も、 「それがね、2038って言うのがキーワードらしくて、これから先、もしかしたら、何かが起きるのかもって思ってるのよ。知り合いの学者の人も、天変地異が起きて、一回地球がリセットされて、その後の未来は、平和で明るい未来がやってくるって言うのよ。調べれば調べる程、消えたパートナーの共通点があったりもするのよね。」 「共通点って、なんですか?」 涼子は、身を乗り出して聞いてみた。 「居なくなったパートナーが全て男性なの」八神も不思議な顔をして言った。 「えっ、何故男性ばかり居なくなるの?未来と関係があるのかしら?」由美子も気になって、会話に入ってきた。 八神が言うには、学者の中でもこのことが話題になっていて、この先に起きるであろう出来事を予測して、何故男性ばかりが居なくなるのか、その現象についても、いろんな人が調べている。 このことについては、テレビやラジオ、雑誌、新聞などのメディアでも、情報が流れていなかった。
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