安倍晴明の功績

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安倍晴明の功績

「おめぇら隠密機動隊の歴史については学んできたんだろ?」  山本の問いに、倭は淀みなく答える。   「平安時代に鬼が現れ悪事を働くようになり、帝の命で討伐隊が結成されたのが始まりだと聞いています」 「そう、その頃最強と謳われた鬼ってのが酒呑童子だ。安倍晴明の指揮の下、名だたる武将らが酒呑童子の討伐に挑んだがついぞ奴を滅するには至らなかった。この本殿にある大鏡も結界の姫君を保護する石棺も、当時安倍晴明が酒呑童子に対抗するため手掛けた遺品だ」 「あのワープする鏡や不思議な石棺を作った人ってことっすか? 安倍晴明ってやっぱりすごい人だったんっすね!」  驚愕する右京に頷いて、山本は話を続ける。 「大江山の鬼退治は有名だから知ってるだろ? 源頼光の手で酒呑童子は首を落とされた。だが肉体を滅ぼすのがやっとだったんだ。奴の魂は消滅することなく次元の狭間へ潜り込み、現世への復活を虎視眈々と狙っていた。  比較的安寧な平安時代が幕を下ろし激動の鎌倉時代がやってくると人の負の感情が巷にあふれるようになった。そうなると邪気が高まり、鬼が台頭してくる。戦乱の世に復活を果たした酒呑童子はまず前世で自分の首を落とした源一族に復讐を果たそうとしたんだな。  当時栄華を誇っていたのは、源頼光の分家筋に当たる源頼朝の一族だった。一族を狙っていた酒呑童子はそこで静御前を見初めたんだ」 「静御前と言いますと、源の義経の妻妾だった白拍子でしたよね」  雪乃が確認すると、山本は大きく頷いた。 「ああ。その美貌もさることながら『その舞姿は天女の如し』と言われていたらしい。酒呑童子も一目で静御前のとりことなった。静御前を手に入れるため、酒呑童子は兄の頼朝を操り義経を追い立て、義経を追って都を離れた静御前を襲い手籠めにしたんだ」 「静御前は義経の子を由比ヶ浜で殺されて出家したんじゃないんですか?」 「鬼狩りで功績を上げた一族の妾が鬼の子を産んだとあっちゃ体裁が悪いから史実が捻じ曲げられたんだよ。静御前が生んだのは鬼の子だ」  衝撃の事実に雪乃は思わず息を呑む。
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